私が、いい歳をこいてから行っていたガッコでの同級生だった、ドロップアウト仲間のSちゃんが、さまざまな事情があって、この街から去っていくことになった。
Sちゃんとは、同じ世代の気楽さもあって、趣味も性格も何もかも違うのにもかかわらず、そこそこ仲良くしていた。
彼は、少しばかり優柔不断で、物事を簡単なやり方で強引に解決しようとしてしまう部分はあるが、基本的には真面目で善良な人間だ。
そういう部分もあるので、実際に臨床の現場に出た時に、本当に患者さんのためにベストな選択ができるかどうかは疑問ではあるが、
そんなことを理由にSちゃんがガッコを追われたことについては、私には
多少なりとも違和感がある。何故なら、ガッコを追われなかった人間が、実際に臨床の現場において、患者さんの立場に立てる人間ばかりだとは思えないからだ。
私から見れば、同級生のほとんどの人間は、 “患者さんの立場に立てるかどうか怪しい” 人間だった。
怪しい人間は多かったのであるが、私自身も、当時40歳代の年上の同級生から、脅されたりもした (前の職場で同僚を脅して遊んでいた事を自慢するような奴だ。金も脅し取っていたらしい。 こやつは、私にもそういう出方をしてきたのであったが、様子を見るために最初に私を脅した際に、私が一回りも年上のこやつを睨みつけて明らかに戦闘態勢に入ったことを見せ付けたために、事なきを得た。 しかし、その後も若い奴の前で、私が喧嘩を売ったかのような振る舞いをされ、若い奴から私が “悪者” 扱いを受けるように仕向けられたり・・・etc・・・と、散々であった) 。
Sちゃんも、年下の同級生から “オヤジ狩り” に遭いそうになっていたし (私が、Sちゃんを脅す若い奴をたしなめて、Sちゃんは被害を受けなかった) 、まだまだ酷いおかしな人間は、幾らでも居た。
そういう酷い奴らが卒業できて、Sちゃんが 『患者さんの為に働けない人間だ!。』 とか、 『元々、ひきこもりだったのだから、今更社会に出てもやっていけませんよ。』 などと言いがかりを付けられて、退学に追い込まれることは、やはり
どこかがおかしいと思うのだ
(もちろん、成績に曇りもない私が、 『あなたは、悪人なのです。』 とか、 『悪人のオーラが出ている。』 などと言う意味不明の言いがかりで退学にさせられたのは、
絶対におかしいのだが・・・。
しかし、なんだよ “オーラ” って・・・医療従事者なんだから、科学的に説明してくれよ・・。長い面談の最後に、 『先生、私が何を尋ねても論理的な説明ひとつ返していただけませんし、お話が平行線なので、ここらで失礼させていただきます』 と、私が言った時には、その “オーラとやら” が出ていたのかもしれない (笑) が、退学が決まったその日も私は、終始丁寧で冷静な口調であった・・・
) 。
私とSちゃんが退学になった話は、この辺でお終いにして、退学になった後のことに話を移そう。まず、働かなければ暮らしていけないわけであるので、就職活動をすることになるのであるが、
進学する前にマトモな職についていた人間でさえ、若くはないので仕事にありつくのは難しい。ましてや、Sちゃんや私のような、 “マトモな職歴のない人間” に仕事などは、そうそうはない・・ (時々、 “自己責任論とやら” を振りかざす人が、 「選ばなければ仕事はある」 とか言って責め立てて来るが、私やSちゃんが屈強な肉体を持っているわけでもないし、仕事を選ぶに決まっているのだ。
屈強な肉体を持っていて、かつ腰痛などなければ土木や建築の現場でいくらでも働くよ。私は、実際に働いたこともあるし・・。
また、信じられないかもしれないが、暮らして行けない様な条件の求人は確かにあるよ。でも、常識的には、そういった所を避けて就職活動するものだと思う。アルバイトのほうが賃金も拘束時間もマシなんだから・・) 。
私の場合は無認可の作業所作りをしていたから、マトモな職歴がないのだが、それに関しては 《バカな人たちの言うところの “自己責任とやら” 》 と言うことにしておいてあげてもいいが (これに関してもいずれ書く・・?・・かもしれない・・) 、
Sちゃんが職歴がないのは、仕方がないことだと思う。私が作業所を離れ、一般企業に再就職しようとしていた (結果、できなかったのだが・・・。何十社落ちたかわからない・・・) 年に、Sちゃんは大学を卒業した (Sちゃんの方が、少し年下。) 。
ちょうどバブル崩壊後の不況のド真ん中で、求人が極端に無い年だった。Sちゃんの学部は、求人が無かったそうだ (学部によっては、就職などしない人ばかりの学部もあるからね・・) 。
仕方ないので、Sちゃんは学生時代のアパートで、 “資産食い潰し生活” に入ったらしい
(“自己責任論とやら” を振りかざすバカは、 「何故バイトしないんだ?!」 と、お怒りになるであろうが、お金があればバイトなんかしないだろう。どうせバイトした所で、職歴には認めてもらえないものだよ。 ← 「アルバイトも立派な職歴」 などと、それらしい事言ってるメディアばかりだが、そんなのは嘘っぱちだ。 私もさんざん職歴扱いしてもらえなかったよ。 無認可の作業所も職歴扱いしてもらえないのだが、もっと昔は作業所は職歴扱いしてもらえたんだよね・・・、私よりかなり以前にそういったことをしていて、バブル真っ最中に転職した人たちをたくさん知っているが、彼らの頃と私たちの頃とは時代が違うのだ・・・) 。
私が “就職事情をよく知っているかのような顔をした人間” に、さんざん罵られたように、Sちゃんも色々な事を色々な人から、かなり言われたらしい。そこで、資格を取って、なんとか仕事にありつこうと進学したらしい (私もだ。) 。
その結果が今の状態になり、Sちゃんは将来の資産に困らないようにアルバイトをしていた (それすら、最近は少ないし、若い人しか雇ってもらえなかったり、派遣業者がピンはねをしていたりする・・世も末だぜ。Sちゃんも、 「アルバイトも全員クビを切って、派遣に切り替える」 とかで、長くやっていたバイトを失った・・・。その後は、短期のものしか見つけられなくて、相当大変だったと思う) 。
私は・・・と言えば、この体たらくで気楽に “主夫” をさせてもらっているのであるが、
退学後の置かれている状況が似通っているためか、なんだかウマが合って、時々食事に行ったりして、Sちゃんとは仲良くしていた。
その状況と言えば・・・・、お互いに今後の人生のことが不安な状況ではある。
私は、万一カミサンに先立たれたら、生活を続けていけないことが不安であるし、Sちゃんは、今後財産を食いつぶしてしまったら生きていけないわけだ (退学後の5年間で、財産は目減りしないように抑えられたらしい。Sちゃん、頑張ったね。かなり節約してたからね・・) 。
まあ、Sちゃんが故郷に帰る事情は色々とあるのだが、持ち家や土地のある田舎に帰れば、家賃などの出費は少なくなるはずだ。そういった意味で、寂しくはなるが、少しは安心したよ。
Sちゃん、故郷でうまく生きていけよ。 いつか、遊びに行くよ。しかし、ドロップアウト組で、この街に残っているのは私だけになってしまった・・・。
ここにいる理由も無いのだから、私も、どこか住みよい所に移りたいな。